2年ほど前に、僕の持っているシティバンク・ゴールドカードがスキミングされて、カードごと新品に交換する羽目になったことがある。昔、アメリカに出張に行った際にカードを使ったどこかの店でやられたのだと思うが、わざわざカード会社のほうから知らせてくれた上に、不正利用分の支払いを取り消してくれた。
まあ当然といえば当然なのだが、さすがはアメリカのしっかりしたカード会社だけあって、トラブル時の対応も丁寧だったのを覚えている。
ところで、
スキミング 強制捜査に着手、逮捕状の7人を逮捕 警視庁
ゴルフ場などでキャッシュカードが「スキミング」され多額の現金が引き出された事件で、警視庁捜査3課などは19日朝、群馬県内のゴルフ場や窃盗グループの関係先など十数カ所を一斉に家宅捜索、強制捜査に着手した。同課は、横浜市内の無職の男(33)ら窃盗容疑などで逮捕状を取ったグループ9人の取り調べを順次始め、既に7人を逮捕した。特定のゴルフ場の貴重品用ロッカーに保管していたカードが被害に遭うケースが多いことから、同課はゴルフ場関係者が関与した可能性もあるとみて関係者らから任意で事情を聴き、慎重に捜査を進める。
同課などの調べでは、グループが関わったとみられるスキミング事件の被害は少なくとも3億円に上り、群馬県内のゴルフ場の系列コースでの被害が目立つ。ほとんどの被害者は、貴重品用ロッカーとキャッシュカードの暗証番号を同じにしており、グループはロッカーの暗証番号を盗み見て現金の引き出しに使ったとみられる。ATM(現金自動受払機)から現金を引き出す際は、間違わずに1回で暗証番号を入力していたという。(毎日新聞)
だいたい、暗証番号やパスワードなどというものは何種類もいちいち覚えてられないし、たいがいの人は同じものを使いまわすものだという心理を悪用した犯行だ。犯人の着想力には"非常に感心させられる"が、知らないうちに金を引き出された人にとっては、たまったものではない。
このようなスキミング事件に対し、日本の銀行はほとんど無策であるというのが実情だ。それどころか、「預金者の自己責任」と突っぱね、一切、補償をしようとしない。
<スキミング>「銀行、損失補填せよ」被害者、怒りあらわに
神奈川県の男性開業医(48)は昨年6月28日朝、口座を開く地銀支店から「あなたがATM(現金自動受払機)で依頼した振込先の口座が見つからない。口座から次々と金が引き出されている」と電話を受けた。心当たりはなかった。通帳を確認すると、3~4日前に東京都と静岡県のATMから約700万円が引き出され、残金は6000円足らずだった。
同日午後、銀行の支店長と担当者が医院を訪れた。補償を求めると、同情的だった支店長らの態度は硬化。「銀行にミスがない場合は自己責任です」と告げた。「カードは手元にあるのに、私に何の非があるんだ」と反論したが、支店長は「おれおれ詐欺のようなもの。私ならあきらめます」と言った。
男性がカードを体から離したのは、同月20日に医師会で行った神奈川県内のゴルフ場で、貴重品ロッカーに財布を預けた時ぐらいだ。カードとロッカーの暗証番号は誕生日の一部を使った同じ番号。警察は「ゴルフ場でスキミング被害に遭ったのだろう」と言った。
これまでキャッシュカードのスキミング事件の捜査が進まなかった一因は、偽造カードを作られた被害者は銀行で、金を引き出された被害者はATMを管理する銀行という点だ。預金を引き出されても懐が痛まない銀行側の被害者意識は薄く、クレジットカード被害の補償が進んだ信販業界に比べ対策は遅れた。
(中略)被害に遭った男性は、「クレジットカードの買い物なら補償されるが、キャッシュカードにはない。引き出し限度額も青天井だった。なぜ利率が低い銀行に大切な金を預けているのか考えてほしい」と憤っている。(毎日新聞)
銀行としては、あくまで悪いのは犯人であって、自分たちもある意味では被害者であるから、被害者である銀行は顧客に対して補償をする義務はなく、一切知らん顔を決め込む姿勢を貫いている。それどころか、
銀行の対応、本当に酷いです。先程、銀行と電話で話した際は、「自分達は犯人ではないのに、なぜ、預金を保証しなければならないのか。筋違いな要求はするな!」と半分切れ気味に言われました。またそれが日本の銀行全体の姿勢だとの説明でした。金融庁が斡旋している「銀行よろず相談所」と言う機関にも相談しましたが、日本の銀行から預金の補償を受けるのはまず無理だと、それが当然の様に言われました。国際的な基準からすると、このような銀行の姿勢は明らかにおかしいのですが、日本国内ではそういう意識は全く欠如しているのですね。もう怒りを通りこして、半ば呆れてしまいました。(大手小町)
このような扱いを受けた人さえいる。
クレジットカードの場合は、スキミングに対する対応も進んでおり、不正利用に対する顧客保護も充実している。また諸外国の銀行の場合は、スキミング被害に遭って預金を引き出された顧客に対して、ある一定の補償を認めている場合がほとんどだ。日本の銀行は、法的に免責される立場にあるからとはいえ、その立場に安住して顧客無視で何も対策を打たない姿勢では、怠慢の謗りを免れまい。
このように、グローバルスタンダードから大きく遅れた日本の銀行は、決済機能(給与振込み、公共料金支払い、クレジットカードの決済口座)以外での利用価値はない、というのが僕の結論である。それ以外の、長く使わない余剰資金については、悪いことは言わないから海外の銀行に移したほうが無難だと、そう痛感した。
【2005/3/26追記】
これだけ新聞などでも言われるようになると、ようやく日本の銀行も重い腰を上げ、キャッシュカード被害に対する銀行補償について検討が始まったようだ。
Comments コメント
11 responses to “相変わらず遅れた日本の銀行~スキミング事件から~”
偽造カード
スキミングも巧妙化してるらしいですね・・・
偽装キャッシュカードと銀行の対応
ここ最近気になったニュースはこれ。
最近自分のキャッシュカードが紛失や盗難にあったわけではないにも関わらず自分が身に覚えがないうちに自分の口座…
トラックバックありがとうございます。
経済指数が世界的に低いとされている南アフリカの銀行でさえきちんと損失補てんしてくれるそうです。
あの文春で読んだ記事はかなりショックでした。しかもこんな事がまかり通っているのは日本の銀行だけだという事も。
おっしゃる通り資産があればシティバンクにでも移したほうが懸命なのかもしれません。
もっとも私にはそんなたいした資産もありませんがw
トラックバックありがとうございます。記事読ませていただきました。読めば読むほど恐くなりますね…。世の中が便利になればなるほど、人間が楽をしようとすればするほど危険も増えて行く気がします。この先真剣に自衛策を考えておかないとどんな目にあうかわかりませんね。
トラックバックありがとうございます。
テレビでもスキミング被害について報じていましたが
今は自衛するしかないようですよね。銀行の見直しも真剣に考えようと思います。
スキミング~キャッシュカード偽造
2001年以降、スキミングといわれるキャッシュカード偽造による犯罪が増加しています。
具体的には、
・キャッシュカードの番号、銀行口座情報を抜き取る
・そ…
こんにちわ。
ご指摘のように、国内の銀行にまともな資産保全を期待するべくはないと考えています。顧客に対するサービスをどのように考えているのかがよく分かる、氷山の一角と思います。
TBいたしました。
銀行
最近はいろいろなものが便利になってきた。でも銀行は進歩していないように思う。銀行によっては土日の何時から何時まではATMからお金を引き出せないとか手数料がかかる…
クレジットカードのスキミングとは?
クレジットカードのスキミングとは、カードの情報を不正に読み出しデータを複製すること。対策としては「カードの読み込み時は目を離さない」「肌身離さず持ち歩く」などが…
スキミングの防衛策
最近ではおサイフケータイなんてものが流行りそうですが、
各個人に防犯意識とカードや携帯にはお金が入っているんだ!
という意識をもっともって自己防衛して…
[…] エントリー「相変わらず遅れた日本の銀行~スキミング事件から~」にも書いたように、日本の銀行の体質がいかに糞かというのを厭というほど思い知った僕は、海外に銀行口座を持って、そこに資金の一部を移している。 […]