今年からNTTの電話回線の基本使用料が値下げされている。他社がNTTを経由しない直収サービスを相次いで始め、どんどん値下げ攻勢をかけているのを受けての対処だが、NTTの値下げ施策の一環として、プッシュホンサービスの基本料が免除となっている。
プッシュホンサービスとは何かというのを説明する前に、電話の架け方のしくみを説明しておこう。家の電話などからダイヤルを回す(または、プッシュホンのボタンを押す)と、その電話機がぶら下がっている電話局の交換機はどうやってそのダイヤルの番号を認識するのかというと、その認識の仕方には2通りある。1つは、電話機からそれぞれの番号に対応するパルス信号を交換機に送る方法。1をダイヤルするとパルスを1つ、2ならパルス2つ、3なら3つ、というふうに、それぞれの番号の数だけパルス信号を交換機に送ることで、交換機側では受け取ったパルスの数を数えて何番がダイヤルされたのかを認識することができる。このような方法で電話を架ける電話回線のことをダイヤル回線と呼ぶ。
それに対して、各ダイヤル番号に対応する高さの音(トーン)をあらかじめ定義しておき、その音を交換機に送る方法もある。たとえば1のボタンを押すと「ピ」という高さの音、2だと「ポ」という高さの音、3だと「パ」……というように、高さの異なる音をそれぞれの番号に割り付けておき、プッシュボタンを押すとそれぞれの音が電話機から交換機に送られる。交換機側では、「ピポパペポ……」などという音の組み合わせを聞いて、そこから対応する番号に変換して、何番が押されたのかを知ることになる。このような方法で電話を架けられるサービスのことをプッシュホンサービスと呼び、プッシュホンサービスが使える電話回線のことをプッシュ回線と呼ぶ。
ダイヤル回線だと、いちいち番号の数だけパルスを送らなければならないので、電話を架けるのに時間がかかりいらつくのだが、プッシュ回線だと、音の高さを変えるだけでよいので、短時間で電話を架けることができる。そのため、プッシュ回線のほうが高級な回線とされている。
去年までは、プッシュホンサービスには毎月300円ぐらいの基本使用料が上乗せされていた。そのため、僕の家の電話はダイヤル回線にして、手持ちの電話機はパルスモードに設定して使っていたのだが、今月からプッシュ回線の基本使用料がなくなり、ダイヤル回線の基本使用料とプッシュ回線のそれとが同額になった(東京などの3級局の場合)ので、この機に家の電話もプッシュ回線に切り替えることにした。
1月14日に工事が完了した。電話局内の交換機のみの工事のため僕が自宅で立ち会う必要はない。帰宅すれば勝手に切り替わっていた。
家の電話機をトーンモードに切り替え、ためしに適当なところに電話を架けてみると、ちゃんと繋がっていた。
何が嬉しいかというと、電話を架けるのが早くなったというのももちろんだが、24時間の自動音声サービスなどに電話を架けたとき、そこでよく番号のボタンを押して選択するシーンに出くわすのだが、そのときにいちいちトーンを出すモードに切り替えて終わった後でパルスモードに戻す、という操作をしなくて済むようになったことである。
願わくば、ダイヤルアップ全盛時代にこのような値下げをしてほしかった。そうすれば、モデムからダイヤルアップするのが劇的に高速になって楽しいことになっていただろうに。