デマメール

近しい人に向けて何気なく発した一言が独り歩きして、社会不安の原因となることがある。特に第三者から漏れ伝わってきたことは、根拠もなく広がりやすい。

「佐賀銀行がつぶれる」とのデマメールがきっかけで佐賀銀行の店舗やATMに預金者が殺到した取り付け騒ぎ事件について、デマメールの発信者が特定された。県内の20代の女性が、知人からそのような話を伝え聞き、友人ら26人に携帯電話のメールを転送し、それがいつのまにかメーリングリストなどを通じて広まったのが原因とのこと。女子高生の何気ない会話が一金融機関を破綻にまで追い込んだ「豊川信金事件」の記憶を呼び起こさせる。

情報を鵜呑みにした送り主の女性は軽率との謗りは免れないものの、銀行が破綻するという情報を友人に知らせなければという、いわば善意から出た行動であることや、佐賀銀行そのものに対する攻撃の意図がなかったとのことで、書類送検にとどめられたが、刑事的にはこれで決着したとはいえ、ATMから合計180億円が一斉に引き出され、現金が一時的に不足するなどの大きな被害を受けた銀行側としては、民事でどのような対応をするのか注目されるところだ。

名もない一個人が対等に情報を発信できるのがネットの一番の利点ではあるが、同時にそれは、個人の発言が社会全体に及ぼす影響もまた大きいという恐ろしさもつきまとう。つい不用意に発した情報のために、一生を棒に振ることにもなりかねない。今回の一件を他山の石とし、ネットでの情報の取り扱いには細心の注意を払いたい。


【2004/9/12追記】
この事件、デマメールの発信者の20代女性について、佐賀地検は先日、不起訴処分にすることを決定したとのこと。

というか、今の今まで捜査が続いていたということのほうが驚きである。


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