NIPPONの大学生

僕は普通の人よりちょっと長かった学生生活を終え,こないだ社会人になったばかりなんだけど,学生と社会人,何が違うのか考えてみた。まあ,うちの職場は私服OKだし,見た目だけはほとんど学生みたいなものなんだけど,しいて違いをあげるなら,

  1. 時間に厳しくなった(朝早起きなんて学生時代には考えられない)
  2. コスト,費用対効果などを意識して物事を考えるようになった(人間を1人働かせるんだって目に見えない金がかかっていることを知った)
  3. 定期安定収入がある(まあ最近必ずしも定期安定とは言えんが^^;)

特に日本社会では,「金を稼ぐ者が偉い」という風潮が強いせいか,経済力のない大学生は社会人と比べて一段低く見られるみたいで,車のローンは親の保証がないと組めないわ,クレジットカードは学生用の限度額の低いやつしか作れないわ,何かにつけて社会人から

「学生の分際で・・・」

などと言われるわで,悲惨な状況にある。同じ年齢でも,大学院の研究室で論文を書いている学生よりも,高校を出てさっさと働いている人のほうが社会的な信用が高いとされている。外国では,院生には給料を支払うところもあると聞くが,日本の学生は無給(いや,授業料を払わなきゃいけないから,マイナスだ)で,サラリーマンと同じか,またはもっと忙しい仕事をやらされている。院生だと,バイトする時間もあんまりないので,いきおい

極貧の生活

を余儀無くされる。いちおう研究室でバイトは紹介してくれたりもするけど,専門学校の講師か,家庭教師ぐらいしかなく,口下手な僕にはとても勤まらない仕事だ。それすらも枠が限られてて,院生の数が増えるとその枠を分け合う形となり,その分1人あたりの収入が少なくなる。その他のバイトをしようと思うと土日にするしかないので,自由時間も少なくなるし,そんなに働く時間もとれないから必然的に身入りは少なくなる。それでいて研究室の飲み会とかイベントとかはいっちょまえにあるし・・・僕はたいてい2次会は失礼してさっさと帰っていたのだが,毎回そういうわけにもいかないので,何回かに1回は付き合うこととなり,そうすると終電近くに帰ることになる。最寄り駅から僕の家までは徒歩30分もあるので,普段はバスを利用して帰るのだが,もちろんそんな時間にバスなどあるわけはない。べろべろに酔っ払った身で30分歩くのも危険なので,どうしても

タクシー帰宅となり

余計な金が飛んでしまう。
奨学金を受ければ,生活は楽になるんだろうけど,奨学金はあとで返さなきゃいけないし,枠が限られているので,相対評価で成績が良くないと受けられない。大学の教員になれば,奨学金を返さなくてもすむのだが,そんなラッキーな人間はそうそうお目にかかれない。
そうやって無理して研究してPh.Dなんか取ったって,日本の会社じゃ博士号なんてただの称号で,給料が良くなるわけでもなし,大学に残って助手になんかなったら,超安月給で,それこそバイトしながらやってかなきゃならない。
#ホントは国立大学の教員がバイトするのは違法なんだけどね・・・まあ法を侵さなきゃ生活もできないってことよ;
研究が好きでやるぶんにはいいんだろうけど,あまりに割に合わないと思ったので,僕は研究はやめてさっさと就職してしまった。いや,2年,人より出遅れてしまったと言ったほうがいい。
今の,学生を軽んじる日本社会の状況では,大学院に進むより,学部を出たら就職したほうがいいと思う。そのほうがよっぽど経済的にも楽だし,会社じゃ院卒よりも先輩になれるし,何より社会的な信用度が違う。そう思って大学院の研究を断念した人も少なくないだろう。その中に,貴重な才能が含まれていたとしたら・・・日本は,大事な人材を失ってしまったことになる。特に基礎研究分野で弱いと言われているのに・・・
成人して大学院で研究を続けている人は,社会人と同じ責任を持っていると思うし,そういう人に対しては,会社員なみの地位と待遇があってしかるべきだね。彼らは,確かに自分のために進学して研究しているんだけど,教授なり指導教官から与えられる研究テーマは,社会的にも要求されている内容なわけだし,学生はちゃんとノルマも課せられて毎日夜遅くまで頑張って仕事しているのだ。

社会人の地位を笠に着て,年の近い学生を偉そうに見下す会社員

より彼らが劣る理由などない。院生から授業料を取るなんてもってのほか。むしろ,給料を払うべきだ。国のために有益な人材を育てるための税金なら,喜んで払うよ。
もし,日本社会が大学生に対して無理解の状態がこれ以上続くんだったら,僕に子供ができても,子供を大学院には行かせたくないね。今の状態では,大学院は「無駄な2年間」でしかないというのが僕の感想だ。むしろ,高卒で就職させたほうが,よっぽど社会人としては早く大人になれるだろう。もし,どうしても何かの研究がしたくて院に行きたいと言い出したら,アメリカの院に行かせるつもりだ。


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