最後に、せっかくシンガポールやジョホールバルにいるので、どうせならマレー鉄道に乗ってどこかマレーシアの田舎町に行ってみたいと思ったので、ジョホール州のお隣の州、ヌゲリ・スンビラン州のグマスというところに行くことにしました。なぜグマス?というと別に理由があるわけではありませんが、ジョホールバルからできるだけ遠く、かつ日帰りでシンガポールまで戻ってこられるところということで一番妥当そうな場所だったからです。
行きの電車は朝9:02ジョホールバル発ということで、1時間前にはホテルをチェックアウトしてタクシーでジョホールバル駅まで送ってもらいました。
駅の待合室は小汚くがらんとしていて、他に待っている人が数人いる程度。ベンチに座って電車を待っていると、黄土色の僧衣のようなものを着た坊主が寄ってきて、中国風のお守りと数珠を押し付けようとしながら何やら語りかけてくるので、何言ってるかわからないと英語で答えると、「ドーネーセン、ドーネーセン」と言ってきます。なんだdonation(寄付)の要求か、と呆れ、Noと言ってぷいっと立ち去ると、その坊主はどこかに行ってしまいました。
30分ほどたつと、人がだいぶ集まってきました。そうすると、さっきの糞坊主がまた戻ってきて、次々に人に寄付を求めては断られていました。おおかたニセ坊主なんでしょう。
朝っぱらからちょっと嫌な気分でしたが、発車の15分ほど前になると改札口が開きました。駅員に切符を渡してハサミを入れてもらい、プラットホームに出ます。
レールの軌間は1000mm。JRの在来線(1067mm)より少し狭いんですが、見た感じあんまり変わりないように思いました。全線単線、一部を除き非電化です。
プラットホームに出ると、すぐに列車が入線してきました。
急行ラキヤ。朝シンガポールを出てクアラルンプール、イポーを通り、夜に終点バターワースへ行きます。ディーゼル機関車が客車を牽引しています。
中の様子はこんな感じ。シートはベンチのように固く、窓も薄汚れた、一昔前の日本の特急列車みたいな感じ、と思いきや、これは食堂車でした。
実際の客車はこちら。シートもふかふかで、車内もきれい。壁には液晶テレビがあり、途中2時間ほど止まらない区間を走っているときはDVDの映画を上映します。なんかバス遠足のような感じです。
列車は定刻通り朝9:02に発車しました。途中クンパス・バル、クライに停車。それから1時間ほど走ってクルアンに停車、そのあと2時間近く走り続けてスガマに停車しました。どの駅も急行停車駅ですがローカル線の無人駅のような簡素な駅舎でした。
マレーシアの車窓から。ヤシやソテツ、その他熱帯雨林が自然に群生しているジャングルの中を突っ切っていきます。
12時過ぎ、定刻通り列車はグマスに到着しました。
ここはマレー鉄道の主要な2線の分岐駅なので、かなり規模の大きな駅です。ただし駅舎は他と変わらず簡素なものでした。
降りた瞬間、鼻が曲がるような強烈な臭気に襲われました。ちょうどゴミ清掃車がゴミ収集している横を通りがかったときの、あの臭い。それが町中に漂っていました。ここの町に限らずジョホールバルでも、そしておそらくマレーシアのどこの町でも、失礼な言い方ですがゴミの臭いのような酸っぱい臭いに覆われているようです。
グマスの町の様子です。まあ言っちゃなんですがボロボロで、道もでこぼこ、歩道も信号機もないので車の切れ目を自分で判断して横断しなければなりません。道行くトラックは遠慮なく排気ガスをまきちらしながら疾走して行きます。日本でも昔、トラックはこんな臭いだったかなあ〜と懐かしくもあり。
車はプロトンというマレーシアのメーカーのものが多かったですが、昔どこかで見たことのある形ばかりのような気がします。おそらく日本の廃車になった車を持ち込んでブランドだけ付け替えたんじゃないかと。そんな何十年前の車でも日本よりはるかに道路事情の悪いところをちゃんと走れてるんだから、きっと車なんて10年10万kmなんかじゃ壊れないんでしょうね。
郵便局。開いているようには見えませんでした。。。
テレコムマレーシアの電話局の局舎。
電話局の前に停まっていた作業車。ハシゴや装備品はNTT−MEや通建業者とあんまり変わりません。
華人系の児童用の小学校。マレーシアでは民族ごとに行く学校が分かれているようです。
ちょっとした広場。
イスラムチックな建物。宗教施設かと思ったら、中をのぞいたらレストランみたいなものでした。
国立学校。校門前に「TOWARDS 5 A'S!」と垂れ幕がかかっています。「オール5を目指して!」みたいな感じですかね。日本の学校じゃこっぱずかしくてできませんね。
せっかくなのでナシゴレンを食べていこうと思ったんですがなかなか売ってそうな店がなく、やっと見つけて入ったレストランです。わりとキレイそうな店です。
ナシゴレン。3リンギ(約90円)也。スパイシーでとてもおいしい。これだけでこの町に来てよかったと思いました。
それから、グマスに限ったことではないですが、駅や施設のいたるところにマレーシアの国旗と自分の州の旗が掲げられていたのが印象的でした。建物はボロでも心は錦というか、自分の国や郷土に誇りを持って生活しているのが伝わってきました。
帰りの列車は17:00発でしたが、定刻より30分も遅れて入線してきました。それでも誰もイライラした様子がないところをみると、それが当たり前なのかも。
こんどの列車は行きよりも古くて汚く、テーブルは取れてるわ、液晶テレビの映像はときどき乱れるわ、しかも機関車のすぐ後ろの客車だったので機関車から出る排気ガスを延々吸わされて、シンガポールに着く頃にはすっかり喉を痛めてしまいました。
途中、クライ駅で停車したとき、いったんホームに停車したかと思ったら、急にバックしはじめ、そのあと再び前進して今度はホームから離れたほうの線路に停車しました。おそらくこの駅で対向車を行き交わせるつもりが、ポイントの切り替え忘れか何かで間違った線路に入ってしまったんでしょう。しばらくすると果たして対向の列車が入ってきました。こういう大らかなところもマレーシアならではなんでしょうか。
20:30頃、ジョホールバルに到着。ここでしばらく停車し、その間にイミグレーションの係員が乗り込んできてパスポートのチェックをしたあと、マレーシア入国カードの半券を回収して査証欄のマレーシア入国スタンプの横に赤ペンでサインしました。これでマレーシア出国完了です。駅舎内にもイミグレーションがあり、ジョホールバルからシンガポール行きに乗る人たちがそこに集まっていました。
10分ほどして全員分の出国手続きが終わり、外で待っていた人たちも乗り込み終わると、列車が再び動き出しました。コーズウェイを渡り切ると、今度はウッドランズのチェックポイントで再び停車し、今度は全員荷物を持って下ろされました。建物に入るとすぐのところに空港と同じ入国審査のカウンターがあり、そこでパスポートチェックと出入国カードの提示、入国スタンプの押印です。建物の中は英語表記、中の香りもチャンギ空港と同じような花の香り。さっきまでのマレーシアのゴミ清掃車の臭いとは雲泥の差です。入国審査官も他の無愛想なところとは違ってスマイルで受け入れてました。
入国審査が終わり、荷物のセキュリティチェックと税関審査が終わると、広い待合室で待たされます。
ここで全員の入国が完了し列車の準備ができるまで待ちます。
列車に乗り続けずにここで降りる場合は、右手の階段を上がるとウッドランズの町へ出ることができます。ただしここから出ると二度と戻ってくることはできません。
21:10ごろ、乗車口が開き、再び列車に乗り込みます。ここからの景色はさっきまでとは違い、道路は整い、走る車もピカピカの最新型、バスも近代的な車種、すべてがきらびやかに光り輝くようでした。20分ほど走り続け、21:40頃、定刻より30分遅れのまま終点シンガポール駅に到着しました。
マレー半島への玄関口らしく、威風堂々とした駅舎です。日本の駅は商業化されすぎてて見栄えも何もあったもんじゃない駅ばかりですが、せめて東京駅ぐらいこのぐらいのしっかりした造りにしてほしいな〜と思います。
2日間マレーシアにいて、やっとシンガポールに戻ってきたときは、その文化的な姿になんか娑婆に戻ってきた感がしたんですが、そんな感動も吹っ飛び「やっぱりマレーシアのほうが面白い、シンガポールなんて嫌いだ!」という出来事に遭遇するのでした。。。。