Carousel (回転木馬)

Carousel

國學院栃木高校の文化祭の目玉の1つである、ミュージカル部の公演「Carousel(回転木馬)」の一コマだ。劇団A Musical Noteの主宰、三枝幹音センセイがダンス指導をしているミュージカル部の公演ということで、去年に引き続いて今年も見に行ってきた。

今年の題目「Carousel(回転木馬)」。Richard Rodgers(音楽)とOscar Hammerstein二世(脚本・作詞)による1945年初演のミュージカルだ。原作はFerenc Molnarの戯曲「Liliom」。1945年4月19日から1947年5月24日までブロードウェイのMajestic Theatreで890回の公演を重ね、1993年ローレンス=オリヴィエ賞4部門、1994年トニー賞5部門にも輝いたともいう名作である。

Spoiler warning(ネタバレ注意)

あらすじを説明すると、舞台は1870年代の米国ニューイングランドで、綿工場で働く2人の少女が、仕事が終わったあとに回転木馬を訪れるところから始まる。そのうちの1人、Julie Jordanのお目当ては、回転木馬の呼び込みをしているテキサス出身の青年Billy Bigelow(曲”Carousel Waltz”)。一方、Julieの友人Carrie Pipperidgeは、自分にSnowという彼氏がいることをJulieに打ち明けて満足顔だ(”When I Marry Mr. Snow” 邦題:Mr.スノー)。

2人がいつものようにBillyのところに遊びに行っているとき、警察官が現れ、Billyはとんでもない結婚詐欺師で、女性からお金を巻き上げている輩だから気をつけろと彼女たちに注意する。Carrieはその場から逃げるが、Julieは残る。Billyと2人きりになり、いろいろと語り合っていくうちに深い仲となり(”If I Loved You”)、ほどなく2人は結婚する。季節は6月だ(”June Is Bustin’ Out All Over” ジューン)。

しかし、その幸せな結婚生活も長くは続かず、Billyは回転木馬の呼び込みの職を失って不安定になり、Julieの親戚のNettieのところに転がり込んだものの、呼び込み以外の職には就く気もなく、あげくにはJulieに暴力まで振るう始末。一方、CarrieはSnowと婚約し、幸せな結婚生活について二人であれこれ夢想する(”When The Children Are Asleep” 子供達が眠ったら)。

島ではその頃、ハマグリや海の幸の収穫期で、島では人々がカーニバルを開いていた(”That Was A Real Nice Clambake” ごちそうがいっぱい)。

そのころ、Billyは素行の悪い船乗りのJigger Craiginとかかわるようになり、彼からある計画を手伝うよう持ちかけられる。その計画とは、そのころ島で行われる宝探しのお祭り行事にまぎれて密かに大金を運ぶ商人から金を強奪することだ。Billyは最初はためらうが(”Soliloquy” うまくいくはずがない)、そのころちょうどJulieが妊娠したと告げられるに至り、生まれてくる子供のためにお金が必要になってくると感じた彼は、その計画に乗ることにする。一方Julieは、自分に対して愛の言葉もなく日に日によそよそしくなっていくBillyに気を病む(”What’s The Use Of Wondrin’?” 考えても始まらない)

さてCarrieは、Snowと幸せなひとときを過ごすが、Jiggerの悪ふざけによりSnowに嫌われてしまう(”There’s Nothin’ So Bad for a Woman” うまくいくはずがない)。傷心のCarrieをJulieが慰める(”What’s The Use Of Wondrin’?” 考えても始まらない)。

宝探し当日、町の人がいなくなったのを見計らったBillyとJiggerは示し合わせて、ちょうど通りがかった綿工場の経営者から金を奪おうとするが、失敗し、逆に彼が護身用に持っていた銃で撃たれてしまう。Julieがすぐに駆けつけたものの、ついにBillyは息を引き取ってしまう。生まれてくる子供を残して夫に先立たれたのを悲しむJulieを、Nettieや町の人たちは励ます(”You’ll Never Walk Alone” 人生一人じゃない)。

死後の世界へ召されたBillyは、天国か地獄かを決める裁判所で裁かれの身になるが、生前やり残したことを解決するために1日だけこの世に戻ることを許される。Billyは、死んでから15年後の地上の世界に送られる。

BillyとJulieとの間に生まれた娘、Louiseは、ちょうどそのころ思春期の難しい年頃を迎えていた。彼女は、亡き父親の生前の素行の悪さが町の噂となっているために同級生たちにいじめられ、また母一人子一人の貧乏生活のためにパーティー用のよそいきの服も作ってもらえない状態。そんなLouiseを見て罪の意識を感じたBillyは、彼女に小さな贈り物を与える。またJulieには、生前にはハッキリと口にしなかった「愛してる」という言葉をこの時初めて告白する(”If I Loved You”)。

そして迎えたLouiseの学校の卒業式。居並ぶ卒業生らを前に、来賓として呼ばれたNettieは祝辞で、「親の行動など関係ない。自分自身の足で立って、人に嫌われることをおそれないで、自分のやりたいように精一杯生きるように」とスピーチをする。これまで親のせいで劣等感を抱き続けていたLouiseは自信を取り戻す(”You’ll Never Walk Alone” 人生一人じゃない)。それを満足げに見守るBilly。そして、フィナーレ。

Louiseたちを変えたのは結局Nettieの一言だったの?とか、じゃBillyはいったい何しにこの世に下りて来たの?とか、ストーリーだけを見ると細かいところに突っ込みを入れたくなる箇所はところどころみられたものの、若い高校生たちの全力の演技がまぶしかった。終わったあと、感極まって泣き出す生徒たちを見ながら、三枝センセイも感無量の面持ち。みんなで何かを作り上げて成功させた喜びが、そこにはあった。

文化祭では他にも出し物があった。僕が見に行ったのは、英語部の展示と、アメリカ語学研修発表。

英語部のほうは、3年生の、わりと可愛い女の子が説明員をやってくれた。彼女も元ミュージカル部員だったとか。英語部は3年生の部員が3人しかいないそうで、このままでは誰も部員がいなくなってしまうと嘆いていた。

英検の3級と準2級と2級のリスニング問題をクイズ形式で体験させてもらえるコーナーがあったので、ためしに2級のを聞かせてもらった。一部の文が空欄になっている文章が書かれたカードを渡されて、その文章がCDプレーヤーから読み上げられる。それを聞いて、空欄になっている文の意味を日本語で答えてくださいと言われた。TOEICと違って単語ごとに区切ってゆっくり読み上げてくれるし音声は2回繰り返されるのだが、アクセントにクセがあって、2回聞いても何言ってるのかよく聞き取れない。2級ぐらいと舐めてかかっていると、けっこう難しいことがわかった。それでも何度か聞いているうちに癖がわかってきて、聞き取れるようになったのだけど。

問題が3問あって、正解するとcertificateがもらえた。

 

アメリカ語学研修発表のほうは、國學院栃木高校のCommunicative Englishの担当講師をしているDevin Kelso氏が、故郷の米国アイオワ州Mount Vernonで自ら主宰する、日本からの交換留学生を受け入れるホストファミリーを紹介しホームステイさせるプログラム「Kelso Heartland Homestay Program」によって派遣された高校生たち24人の体験報告である。

彼ら彼女らは、Mount Vernon近辺のホストファミリー宅にステイし、アイオワの広大な農場を体験したり、Walmartでのショッピングや映画「Field of Dreams」ゆかりの野球場の観光や大リーグCardinalsの試合観戦(元オリックス・田口選手にもらったサインまであった)などを通じたエキサイティングな2週間について、掲示板に写真とコメントで紹介していた。

Kelso Heartland Homestay Program 2005

参加者は、「アメリカの本場の英語を学びたい」というのを応募動機にしていた人が多かったようだが、語学よりも、それ以外の、目に見えないいろいろなことを学んだのではないだろうか。今まで生きてきた世界と全く違うものがあることを目の当たりにして、自らの価値観が根底から覆される体験、これこそが、このようなプログラムの最大の醍醐味だろう。

生徒への教師の暴力事件など、いろいろとたいへんなニュースもある國學院栃木高校だが、生徒たちの若さを見ていると、まだまだ世の中は明るいと楽観視していいような気にさせられる。「若いって、いいなあ……」と感慨にふけりながら、今晩は佐野市のビジネスホテル「ホテル三吉野別館」に投宿し、こうやってブログ書いている32歳のヲヤヂなのだった……。

【関連サイト】

Carousel (musical) – Wikipedia
Carousel (1956 Film Soundtrack)
Mount Vernon-Lisbon Sun
“We want to make a bridge”

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【2005/09/18追記】

アメリカに「ニューイングランド州」なんて州はないよね……。東部のコネティカット州、メイン州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、ロードアイランド州、バーモント州を合わせて「ニューイングランド」地方と呼ぶのだそうな。ということで、訂正。

【2015/12/12追記】

あらすじを少し修正。Soliloquyは「うまくいくはずがない」ではなくて、文化祭のときのナンバーには入ってませんでしたね。「”What’s The Use Of Wondrin’?” 考えても始まらない」も、使われている場面が違ってました。

 

Comments コメント

One response to “Carousel (回転木馬)”

  1. […] 「回転木馬」(Carousel)のあらすじは10年前のブログ記事の内容にも書いてありますが、この作品の舞台となっているのはアメリカのニューイングランド地方・メイン州。ロブスターが名産といわれている場所だそうで、一度行ってみたい気持ちが頭をもたげてきたので、実際にメイン州まで行ってみることにしました。 […]