あれから1ヶ月経ってしまったわけだが

兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故からちょうど1ヶ月が過ぎたが、現場は電車の復旧はおろか、まだ事故の爪痕を生々しく残した状態が続いている。
JR西日本の組織のいろいろな問題点が浮き彫りにされた。運転士に対する過酷な”日勤教育”と称する懲罰、過度に時間に厳格すぎるダイヤ、効率最優先で安全対策が等閑視された経営戦略、事故原因の隠蔽体質……などなど、JRの糞な体質が次々と世間の批判の槍玉に挙げられた。
しかし、このようなJR憎し的な批判的な論調がマスコミを中心に展開されてきた影響か、JRに関することなら何でも叩いて構わないかのような風潮が生まれてきた。
まず、事故現場に居合わせながら、現場にとどまって救助活動をせずにそのまま出勤した2人の運転士について批判されているが、彼らはそんなに責められるべきなのか? 「非常事態にあっては、これからの予定を変更してでも現場で救助活動や乗客の安全な誘導にあたること」というマニュアルがあったにもかかわらず、それに反して出勤したというのであれば、批判されても仕方ないが、彼らはその場で勤務先の上司に連絡し、その指示に従ってそのまま出勤したとのことである。であれば、彼らを責めるのは全くの筋違いだ。
もし上司の指示に従わず、または勤務先に連絡することもせず、勝手に現場に居残ったために、彼らの本来の配置である路線の乗務に影響が出たら、その路線の利用者が迷惑したのではないか。勝手に乗務員が抜けて穴が開いたら、今度はそこで混乱が発生して、それが二次事故に結びつく可能性だってないわけじゃない。それに、とりあえずはまず職場に行って、そこで作られた特別の救助体制みたいなものに組み込まれて、その中で組織的に動いたほうがより効率良い活動ができるだろうと予測して、あえて出勤という選択肢を選んだのかもしれない。
それを、あたかも持ち場を投げ出して逃げたかのように報道され、世間にさんざんバッシングされたあげく、新聞社に”反省文”まで出させられていた。仮にそうであったとしても、彼らとて人間、未曾有の大惨事に接して、同じように事故に遭った一般人と同様に、パニック状態になっていたとしても不思議ではない(そういう事態に備えた訓練を実施するプログラムが会社に用意されていなかったという点は批判に値するかもしれないが)。眼前に広がる阿鼻叫喚の修羅場を目にして、冷静に行動できる人など、そうそういるもんじゃないだろう。この2人の運転士も、どうしてよいか自分で判断がつかなかったから、上司の指示を仰いだのではないか。
問題なのは、非常時におけるマニュアルや訓練体制が未整備であったことであって、現場の個人の行動をあんまり責めるのは、酷というものだろう。あとになってから、ああすべきだった、こうすべきだったといろいろあげつらって他人を批判することは非常に簡単だが、批判する前に、自分が同じ立場に居合わせたら果たしてどうしただろうかということを、もう一度振り返ってみたいものだ。
また、事故があってから社内で予定されていた飲み会や宴会を中止しなかったことも批判を浴びているが、自分の会社の組織では果たしてどうだっただろう。「若手社員が『中止しよう』という声をあげなかったことは情けない」などと言った人もいたようだけど、その人の勤める組織はさぞかし風通しがよく、大先輩の勤続30年の慰労会でいろいろな部署から偉い部長やら本部長やらに調整つけて忙しいスケジュールを押さえてもらって出ていただく予定のものを「止めませんか」と進言できるんだろう。全然一緒に仕事したことのない別の部署で何か不祥事があっても、会社全体の問題と考えて、自分の組織でも楽しい飲み会は遠慮するような配慮を見せられるに違いない。正義漢ぶって拳を振り上げて批判記事を書き、記者会見で罵声を浴びせる記者はいても、JRを批判する前に自分の周りを振り返って反省してみるという雰囲気をみせた報道は、ひとつも見たことがないが、みんな相当素晴らしい組織に所属してるようだ。
遺族や被害者など、事故の当事者が怒りにまかせて感情的にJRを叱責するのは理解できるが、マスコミまでがそのお先棒を担いでセンセーショナルな報道を繰り返し、JRに対する敵意を煽り立てているのは、どういうわけか。そのほうが、読者の受けがよいからだろう。
その結果、JR関係なら何でも攻撃してよいかのような雰囲気ができてしまった。現場の駅員が、事故の被害者でもない乗客に殴られたり、女性運転士が線路に蹴り落とされたり、それこそ何の関係もない阪急の線路に置き石されたりする。つか置き石とかしてる奴、まじ氏ねよ。それでまた事故でも起こって死者とか出たら、それこそ今度は誰のせいになるんだ。
JR西日本を庇うつもりはさらさらないけど、一連のマスコミの論調を見て、ちょっとグチってみたくなった。もっともマスコミのほうはもう飽きてきたみたいで、ずぶぬれの謎のピアノマンやら立って歩くレッサーパンダやらに興味が移っちゃったようだけど。ま、「一ヶ月ぐらい困らないネタを提供してくれてありがとう」っていうところなんじゃないか。

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【2005/05/27追記】
マスゴミの論調があまりにアレなので世間の認識についても少し心配していたが、いろんなブログや2chを見る限り、一般大衆のコメントにはマトモなのが多かったので安心した。

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One Reply to “あれから1ヶ月経ってしまったわけだが”

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