鼻血を出して思うこと

鼻水が出てきたような感じがしたので、急いでティッシュを取り出して、鼻をかんだ。ティッシュを鼻から離してみると、ティッシュが真っ赤な血に染まっていたのである。
毎月、血を見ていて慣れている女性たちと違って、男性は血を見るとたいていうろたえるものだ。それが自分の身体から出ているものであるときは、なおさらだ。僕はあわててトイレに駆け込み、自分の顔を鏡に写してみた。鼻の中から血が溢れ出ており、一向に止まる気配がない。鼻血が出たときには上を向いてはいけないらしく、鼻をつまんだまま下を向いていなければならない、と救急法を習ったときに聞いていたので、上を向きたい衝動を必死で抑えながら、血が止まるまで小鼻をつまんでじっとしていた。
鼻血なんて出したの何年ぶりだろう。僕の記憶では、もうかれこれ20年ぐらいは鼻血と無縁だったんじゃないだろうか。どうして鼻血が出てしまったのか、思い当たるふしはまるでない。僕はさっそく、Webで鼻血について検索してみた。
鼻血の原因にはいろいろあって、爪などで鼻粘膜を傷つけたり鼻を強く打ったりなどの外的な要因のほかに、のぼせたり、病気などが原因で起こることもあるらしい。鼻血が出る病気――いろいろ調べていくうちに、僕は、ある最悪の可能性に思い当たった。
白血病――白血球が異常に増えるという、いわゆる「血液の癌」といわれる病気である。血液の成分として主に赤血球、白血球、血小板というものがある。赤血球は血の赤い色のもととなっていて、体内を循環することにより酸素を全身に運ぶ役割がある。白血球は血液中に入ってきた細菌やウイルスを殺す作用があり、血小板は血液を凝固させて出血などを止める働きがある。白血病は、そのうちの白血球が異常に増殖する病気である。正確には、白血病細胞とよばれる血液の腫瘍細胞が増加して、正常な造血機能を損なうのだそうだ。
古代ギリシャの時代から既に記録されている病気だそうだが、この病気にかかるとどうなるかというと、白血病細胞が血液中に増えすぎることによって血液の循環が悪くなり、脳や肺がつまる、いわゆる脳梗塞や肺塞栓になったり、腎臓に血液がめぐらなくなることによる腎障害が起きたりして、結果的に死に至ることになるらしい。
もっとも、今では治療法が進歩していて、このように白血病細胞が増えすぎることが直接的な死因になることは少なく、むしろ白血病細胞が増えて正常な白血球が減ることによって細菌に感染しやすくなり、それが全身を回って敗血症などを起こしてそれが致命的な結果をもたらすことが多いそうである。
ドラマなどで、白血病にかかってしまったシーンを表現するのに、鼻血が止まらなくなる、という場面がよく出てくる。白血病にかかって白血病細胞が増えると、通常あり得ない、血管の中で血液が凝固しようとする現象が起きるそうで、そのときに血小板が使われてしまうのだそうだ。それによって血小板が少なくなってしまい、本来の役割である、出血時に凝固して止血するという働きが十分果たせなくなる。その結果、鼻血が止まらなくなったり、歯茎から出血したりするのだそうだ。
白血病には急性白血病と慢性白血病とがあり、急性白血病の中でも、白血病細胞の種類によって急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病に分けられる。成人になってからかかるのは圧倒的に急性骨髄性白血病で、急性リンパ性白血病は小児に多いらしい。急性白血病になると、貧血や高熱、出血などの症状が急激に現れる。
慢性白血病も同じように慢性骨髄性白血病と慢性リンパ性白血病とがあるが、ほとんどは慢性骨髄性白血病だそうだ。慢性骨髄性白血病は通常は自覚症状がなく、健康な人とほとんど変わらないように見えるが、この病気になると数年のうちに必ず、急性骨髄性白血病とまったく同じような症状が現れるとのこと。これを「急性転化」と呼び、ひとたび急性転化するとその治療は極めて困難で、半年以内にほとんどが死亡するとのことだ。
さて、僕が今かりに死んだとしたら、どうなってしまうのだろうか。遺品整理で部屋の中の恥ずかしい私物を遺族に見つけられては死んでも死に切れない。クルマのローンも残っているし、その他もろもろの身辺整理もまだである。ハテ困った――。
そんなことを考えながら、夕食を食べた。食べながら、そういえば昨日の夕食は脂トロトロのチャーシューメンにニンニクぶち込んで食べたっけ、と思い出した。その前の日はウナ重だった。よくよく考えてみると、最近の僕の食事は精のつくものばかりだったのだ。あり余って吐き出しどころのない精力が、鼻から吹き出てきたに過ぎなかったのだ。
ようし、今日は早く家に帰って爆発させるとするか。

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